USDT(Tether/テザー)とは、時価総額でビットコイン、イーサリアムに続いて3位にランクインする仮想通貨です。世界初のステーブルコインで米ドルと連動するように設計されているため、価値が安定しているのが最大の特徴。「ブロックチェーン上の法定通貨」となることを目的として開発されてました。
この記事ではそんなUSDTについて、特徴や仕組み、購入方法、今後の動向を踏まえて「どんな人におすすめの仮想通貨」であるかを解説します。
USDT(Tether/テザー)とは?
USDT(Tether/テザー)とは、Tether Limited社が2015年2月に発行を開始した世界初のステーブルコインです。米ドルと連動して、「1USDT = 1USD」を保つように設計されているため、価格変動が激しい市場の中でも価値が安定しているのが特徴です。
スイスのルガーノ市ではUSDTによる公共料金の支払いが可能で、事実上の法定通貨となるなど、仮想通貨の中では信頼性や安全性が比較的高いコインとなっています。
USDT(Tether/テザー)の概要は以下の通りです。
名称 | Tether(テザー) |
ティッカーシンボル | USDT |
発行元 | Tether Limited |
価格 | *153円/USDT(1ドル=153円) |
時価総額 | *17兆5千億円 |
時価総額ランキング | *3位 |
公式サイト | https://tether.to/en/ |
USDTとUSDCとの違い
USDTと似た特徴を持つコインにUSDC(USD Coin)があります。
USDCも米ドルと連動するステーブルコインで、「1USDC = 1USD」となるように設計されています。よく混同してしまいますが似て非なるものであるためUSDTとUSDCの違いを理解しておきましょう。
銘柄名 | USDT(Tether/テザー) | USDC(USD Coin/USDコイン) |
発行元 | Tether Limited | CircleとCoinbaseが共同で発行 |
設立年 | 2015年 | 2018年 |
開発目的 | ブロックチェーン上で法定通貨として機能すること | 監査可能で透明なデジタルドルを提供すること |
時価総額 | 17兆5千億円 | 5兆1600億円 |
時価総額ランキング | 3位 | 6位 |
裏付資産(※) | 75.85%:現金及び現金等貨物、その他の短期預金、コマーシャルペーパー12.55%:担保貸付金9.96%:社債、ファンド、貴金属1.64%:その他(デジタルトークンを含む) 参照:Reserves Breakdown at March 31, 2021 | 61%:現金および現金同等物13%:国外の銀行が発行するCD(Certificates of Deposit)12%:米国債9%:コマーシャルペーパー5%:社債0.2%:地方債と米エージェンシー債 参照:Greater Transparency for USDC Reserves |
USDTとUSDCの最も大きな違いは、会社の透明性です。テザーは以前に十分な裏付資産を保有しているのかと問題になり、情報開示を申し立てられたことがあります。さらにその際には情報開示請求を拒否。結果的には開示したものの、一時的に信頼を大きく損ないました。
一方USDCは、法に準拠して情報をクリアにしながら運営しています。市場の大きさではUSDTが先を行きますが、USDCの方がより安全で信頼性の高い資産であると言えるでしょう。
USDTの特徴
前述の通りUSDTは時価総額3位を誇る仮想通貨です。ここではその特徴について詳しく解説します。
テザーの主な特徴は以下の3つです。
- 米ドルと連動するペッグ通貨
- 複数ののブロックチェーンに対応
- 多くの取引所で基軸通貨として機能
それぞれ詳しく見ていきましょう。
米ドルと連動するペッグ通貨
テザーは世界初のステーブルコインとして特に注目を集めました。米ドルと連動するため、ビットコインやイーサリアムなどの他の仮想通貨よりも価値が安定しています。
ステーブルコインとは、法定通貨やコモディティなど他の「モノ」の価格と連動するように設計され、価格の安定を目的とする仮想通貨のことを指します。ステーブルコインには以下4つの種類があります。
- 法定通貨担保型:円やドル、ユーロなどの法定通貨と連動する仮想通貨。
例)テザー、USDC、バイナンスUSDなど - 仮想通貨(暗号資産)担保型:他の仮想通貨に連動する仮想通貨。
例)DAI、SUSDなど - 無担保型(アルゴリズム型):連動するものはなく、あらかじめ設定されたアルゴリズムが市場に応じて自動的にコインの供給量をコントロールするため、担保がなくても価格が安定する。
例)フラックス(FRAX)、ニュートリノUSD(USDN)、マジック・インターネット・マネー(MIM) - コモディティ(商品)型:金や銀などの物理的資産(コモディティ)と連動する仮想通貨。
例)PAX Gold、ZPG(ジパングコイン)
複数のブロックチェーンに対応
テザーは複数のブロックチェーン上での利用が可能です。多くの仮想通貨は単一のブロックチェーン上でのみ機能するため、基本的に異なるブロックチェーン同士では直接交換することができません。
しかしUSDTは以下のように複数のブロックチェーンに対応しているため、異なるブロックチェーン間で取引が可能です。
- ビットコイン(Bitcoin)
- イーサリアム(Ethereum)
- トロン(Tron)
- イオス(EOS)
- アルゴランド(Algorand)
- ソラナ(Solana)
- ビットコインキャッシュ(Bitcoin Cash)
- アバランチ(Avalanche)
- ニア(Near)
- ポリゴン(Polygon)
多くの取引所で基軸通貨として機能
テザーは数多くの取引所で基軸通貨として取り扱われています。取引可能な通貨ペアが多く、テザーを保有していれば他の通貨への変換が容易に行えるのが特徴です。
また他にも、仮想通貨の次に流行るものとして期待されているMove to Earnや仮想通貨NFTの分野でもUSDTの活躍が目立ちます。例えば世界最大級のNFTマーケットを誇るBybit NFTでは、USDTでNFTを購入することができます。
中央集権型仮想通貨
時価総額第1位の仮想通貨であるビットコインは、世界初の中央に管理者を持たない非中央集権の通貨として世界を驚かせました。その後に開発された仮想通貨の多くも非中央集権で、特定の管理者を持たない仕組みで管理されています。
一方でテザーはTether Limited社を管理者とする中央集権型の仮想通貨です。中央集権を敷くことで発行枚数を管理して、米ドルとの連動が可能となっています。
仮想通貨ではあるものの、法定通貨のように価格の安定性を重視するステーブルコインとして機能するために中央集権をとっているのです。
USDTの価格動向・チャート分析
USDTは米ドルとのペッグ通貨であり、価格は米ドルの値動きに合わせて変動します。下記画像は、2024年4月2日から同年5月2日の1ヶ月間における米ドル 対 日本円の価格チャートです。
次に同期間におけるUSDT 対 日本円の価格チャートを見てみます。
上記2つの画像からも米ドルと連動していることがわかります。そのため今後の価格動向を把握するためには、米ドルの動きを分析する必要があるのです。
最後にUSDT 対 USDの価格チャートを見てみましょう。
多少前後はするものの、基本的には0.999USD〜1.0010USDの範囲を保っているのがわかります。最後にビットコインとUSDの価格チャートを見てみましょう。
USDTが安定している通貨であることが簡単に理解できるはずです。
ビットコインはこの1ヶ月でおおよそ1万5000ドル(約231万4000円)の価格差があります。1ヶ月間で通貨の価値が200万円以上も下落しています。
USDTがどれだけ安定している通貨なのか、一目瞭然です。
市場の動きや投資家が大きな成長を期待している仮想通貨に関する情報を収集した場合は、仮想通貨に関するテレグラムチャンネルを利用してみるのもおすすめです。テレグラムにはドージコインをはじめとする熱狂的なコミュニティが多く存在します。活発に情報交換が行われているため、今後の取引に役立つこと間違いありません。
テザー(Tether)の将来性は?
テザーの将来性は、Tether Limitedのホワイトペーパーを確認することで把握可能です。テザーのホワイトペーパーには大きく下記2つの機能実装について言及しています。
- マルチシグの実装
- スマートコントラクトの実装
それぞれ詳しく見てみます。
スマートコントラクトの実装
USDTはスマートコントラクトを実装することによって安全面、利便性の向上を目指しています。
スマートコントラクトとは、あらかじめ設定されている条件を満たすことで自動的に契約が実行される仕組みです。人の手を介さないことで契約や取引の効率化、また改ざんや不正の防止にも繋がります。
安全面や効率面が向上することはもちろん、仲介手数料が安くなり低コストで運用できるといったメリットもあります。スマートコントラクトが実装されれば利便性がさらに向上し、より多くの取引所で基軸通貨として採用されることでしょう。
マルチシグの実装
テザーはまた、マルチシグの実装による安全面の向上を目指しています。
マルチシグとは、「マルチシグネチャー」の略称で、直訳は「複数の署名」。仮想通貨を売買、または送金する際に複数の秘密鍵が必要となることでセキュリティ向上に繋がります。
USDTは現在シングルシグのため、単一の署名で仮想通貨取引を行えます。しかしこの秘密鍵が盗まれてしまうと取引所に保管しているテザーを盗み出すことができてしまいます。
マルチシグでは「2/3」といったように分数で必要な署名の数を表しています。これは「設定している3つの秘密鍵と署名のうち、2つが必要」という意味で、1つの鍵が盗まれたとしてもハッキングすることが困難となります。
テザーにマルチシグが実装されれば、より強固なセキュリティが期待できるため、今よりも安心して利用できるようになるでしょう。
USDTのメリット
USDTを保有することで様々なメリットを受けることができます。ここではその中でも特に大きなテザーのメリットを2つ紹介します。
- 価値が安定
- 基軸通貨としての役割
それぞれ詳しく解説します。
価値が安定
USDT(テザー)最大のメリットは、価格が安定していることでしょう。仮想通貨は価格変動が非常に激しく、専門家でも相場を正確に読むことは困難です。特にビットコインの半減期前後では市場が大きく動き、ビットコインの成功者を生む一方で、わずか数日で価値が数十%下落したケースも少なくありません。
しかしテザーは、米ドルに紐付いたステーブルコインなので価格が比較的安定しています。基本的には「1USDT = 1USD」を維持するように市場が動くため、ほとんど価値が変化しない通貨です。
過去には他のステーブルコイン「テラUSD」が急落したのを背景に、市場全体がドミノ倒しのような状況に陥った際には「1USDT = 0.9455USD」まで下落したこともありますが、一時的なものですぐに回復しました。
仮想通貨市場を揺るがす問題が発生した際には一時下落することもありますが、それでも下落率は他の仮想通貨と比較しても低いです。これから仮想通貨取引を始めたいけど、市場の暴落が不安と考えている人にとっては選択肢の1つになるでしょう。
基軸通貨としての役割
テザーは上記でも紹介した通り、米ドルとのペッグ通貨で価値が安定しているのが特徴の仮想通貨です。この特性からテザーは、多くの取引所で基軸通貨の役割を果たしています。
そのため、他の仮想通貨で利益が出た際にUSDTへ返還することで実質的に利確ができるのです。
また上記でも触れたようにUSDTは、NFT購入時にも利用できます。安定している通貨であるため、今後もブロックチェーンの普及するにつれて様々なプロジェクト内でUSDTが活用される可能性を秘めていると言えるでしょう。
USDTのデメリット
メリットだけに注目するのではなく、デメリットも把握しておくことが大切です。USDTのデメリットは大きく下記2つです。
- カウンターパーティ・リスク
- 投資先としては不十分
それぞれ詳しく解説します。
カウンターパーティ・リスク
テザーは、Tether Limitedが発行を管理する中央集権型の仮想通貨です。テザーに限らず、中央集権を敷く仮想通貨の最大の懸念点がこのカウンターパーティ・リスク。
カウンターパーティ・リスクとは、取引先(カウンターパーティ)が不正行為や破産をしてしまうことで通貨の価値がなくなってしまうリスクのことを指します。
非中央集権を採用する仮想通貨では管理組織が存在せずに各個人が管理責任を負うため、システムのダウンや資産の不正流用などのリスクが低減されます。中央集権ではどうしても中心となる存在の評判等によって価格が左右されてしまうのがデメリットです。
投資先としては不十分
テザーはステーブルコインであり、投資先をして大きな利益を生み出すことはないと言っても過言ではありません。そもそもテザーが開発された目的は「ブロックチェーン上の法定通貨」になることであって、投資先として大きな利益を生み出すためではないのです。
そのため、仮想通貨で億り人を狙っている人には向いていないので注意してください。大きな利益を狙うなら柴犬コインやエルフトークンに代表されるミームコインがおすすめ。また、ローンチ間近の仮想通貨もチェックしてみてください。
USDTはこんな人におすすめ
ここまで読んでUSDTが大体どんな仮想通貨なのか理解できたけど、私に必要かわからないという方もいるのではないでしょうか?
テザーを含めて全ての仮想通貨は、目的によって保有するべきか否かが決まります。ここではUSDTを保有すべき人のタイプについて解説します。
下記2種類いずれかのタイプに当てはまる人はテザーの保有を検討してみてもいいかもしれません。
- 他の通貨の利益を利確したい人
- 初めて仮想通貨を取引する人
それぞれ詳しく見てみましょう。
他の通貨の利益を利確したい人
テザーはその特性から価格が安定しているため、様々な取引所で基軸通貨の役割を果たしています。つまり、他の仮想通貨への変換が容易だということです。そのため、ビットコインやイーサリアムなどの他の仮想通貨で利益がでた際の利確先として利用することができます。
他の通貨で利益が出てそのまま保有したままではまたいつ価値が下がってしまうかわかりません。一刻も早く利確したい時に便利なのです。テザーは儲けるための仮想通貨ではなく、こういった場面で力を発揮する仮想通貨となっています。
初めて仮想通貨を取引する人
仮想通貨は一般的に、価格変動が非常に激しい市場として知られています。ビットコインやイーサリアム、その他アルトコインは1日で価値が10%以上アップダウンすることも日常茶飯事です。仮想通貨に興味があるけど市場動向が読めずに、なかなか手が出ないと諦めてしまう方も少なくないようです。
一方でUSDTは、米ドルと連動するステーブルコインであるため価格が安定しています。リスクが少なく大きなリターンも見込めませんが、仮想通貨の取引をこれから始めたい方におすすめの仮想通貨です。
テザーは多くの取引所で基軸通貨の役割を果たしています。まずはテザーで仮想通貨取引をスタートして、慣れたところで他の仮想通貨に変換することもできるので非常に便利です。
USDT(テザー)の購入方法/買い方
USDTは現在、国内取引所には上場していません。そのため仮想通貨を元手として取引する必要があります。以下のように国内取引所で購入した仮想通貨を海外取引所に送金して、USDTを購入するといった手順を踏まなければいけません。
- 国内取引所で口座開設
- 取引所に円を入金
- 取引所で仮想通貨を購入
- 購入した仮想通貨を海外取引所に送金
- USDTを購入
国内取引所で取引されていない仮想通貨の買い方は概ね一緒ですので、今後の参考にもしてみてください。
それでは購入方法について詳しく見てみましょう。
1. 国内取引所で口座開設
まずは国内取引所で口座開設を行います。CoincheckやDMM Bitcoin、bitFlyerなどの中からあなたに適した取引所を選んで開設してください。取引所を選ぶ際は、取引手数料やセキュリティ、入金方法の点から選ぶのがいいでしょう。
2. 取引所に円を入金
口座開設が完了したら、次はUSDTを買うための元手となる仮想通貨を購入するための資金を入金していきましょう。多くの取引所では銀行入金やコンビニ入金、またクレジットカードで入金することができます。
3. 取引所で仮想通貨を購入
入金が完了すれば仮想通貨を購入していきます。購入する仮想通貨はビットコインやイーサリアム、リップルなどの有名なものを選ぶのがいいでしょう。あまりにもマイナーな仮想通貨では、USDTとペアになっておらず購入できない場合もあります。
さらにマイナーな仮想通貨であればセキュリティ面や信頼面で不安がつきまといます。いつ破綻してしまってもおかしくないので、王道を購入するのが安全です。
また、仮想通貨市場は価格変動が激しいため、値動きを確認することも大切。入金が完了したからといってすぐに購入するのではなく、今が買い時なのかを冷静に判断しましょう。
4. 購入した仮想通貨を海外取引所に送金
いいタイミングで購入できれば、その仮想通貨を海外取引所へと送金していきます。海外取引所といってもその特徴は様々です。特徴をしっかりと理解して選びましょう。運営会社や運営されている国、評判などを確認して総合的に判断することが大切です。
5. USDTを購入
海外取引所への仮想通貨送金が完了すれば、ついにUSDTを購入可能です。支払い通貨と購入する数量を選択して購入します。このあとは、ICO仮想通貨の購入に使用するなどご自由に利用ください。
USDT(テザー)に関するよくある質問
USDT(テザー)に関するよくある質問をいくつか紹介します。
USDT(Tether/テザー)とは、Tether Limited社を中央管理者とする「1USDT = 1USD」を保つように設計された世界初のステーブルコインです。プレセール仮想通貨を購入する際にも使われるコインです。
国内取引所でUSDTは取り扱っていないため、まずは海外取引所でビットコインやイーサリアムなどの仮想通貨に変換した後にCoincheck等の国内取引所に送金して日本円に変える必要があります。
USDTは国内取引所に上場していないため、以下の手順で取引する必要があります。
1. 国内取引所で口座開設
2. 取引所に円を入金
3. 取引所で仮想通貨を購入
4. 購入した仮想通貨を海外取引所に送金
5. USDTを購入
執筆時点(2024年5月6日)での1USDTは153円です。
価格変動が激しい市場において、米ドルと連動して「1USDT = 1ドル」を保つように設計されているUSDTは比較的安全な仮想通貨と言えるでしょう。一方で中央集権型の仮想通貨であるため、発行元のTether Limitedの信頼性や評判に大きく依存している点には注意が必要です。
まとめ:USDTとは世界初のステーブルコイン
USDTとは、Tether Limited社が2015年に開発した、「1USDT = 1USD」を維持するように設計された世界初のステーブルコインです。セキュリティトークンでも活用されているブロックチェーン上での法定通貨となることを目的として開発されました。その目的通り、多くの取引所ではWeb3.0時代の基軸通貨としての役割を果たしています。
ステーブルコインであるため爆上げを見込める仮想通貨ではありませんが、大きな損害を被る可能性も低いのが特徴。しかしUSDTの利便性から、将来性が明るいメタバース関連の仮想通貨の購入も可能ですので、持っていて損することはないでしょう。
今後はマルチシグやスマートコントラクトといった機能が実装される予定です。実装に成功すれば、仮想通貨業界での存在をより一層大きくすることでしょう。