中国の仮想通貨市場の現状とは?デジタル人民元の展望を解説

2024年現在における中国の仮想通貨市場は、中国政府による厳しい監視下にありつつも、中国経済の低迷が投資家たちの仮想通貨取引の活性化を促している状況です。

中国政府が仮想通貨取引を規制する背後には、デジタル人民元の普及を促進させる狙いがあります。

もしデジタル人民元が中国市場で普及した場合、中国と密接な経済関係を持つ国々、特に発展途上国においてもデジタル人民元が普及することが予想され、これが米ドルを中心とした世界経済に大きな影響を与える可能性があります。

その一方で、中国の厳しい規制の中でも成長を続ける中国発の仮想通貨プロジェクトが多数存在しています。

本記事では、2024年現在における中国の仮想通貨市場の現状を解説し、今注目すべき中国発の仮想通貨プロジェクトを5つ紹介します。

中国における仮想通貨取引の現状【2024年】

2021年9月、世界中で仮想通貨への関心が高まる中、中国政府は仮想通貨取引および関連サービスを全面的に禁止すると発表しました。

それでもなお、中国人投資家たちの仮想通貨への関心は根強く、2024年現在も中国の厳しい規制が続いているにも関わらず、さまざまな方法を駆使して監視をかいくぐりながら仮想通貨取引が続いています。

この関心の背景には、中国経済の低迷が大きく影響しており、多くの投資家が避難通貨としての仮想通貨に資金を移動させているのが現状です。

ただし、国内での仮想通貨取引は禁止されており、海外への資金移動も厳しく制限されています。

一方、2023年には香港でデジタル資産取引の解禁を受けて、香港の仮想通貨口座を経由して年間5万ドルの外貨購入枠を利用し、仮想通貨に資金を流している投資家や、VPNやP2P取引により中国政府の規制をかいくぐって仮想通貨取引を続ける投資家も少なくありません。

仮想通貨取引所Bitgetが2023年5月から8月にかけて行った調査によると、ヨーロッパ、中国、日本、韓国、トルコ、英語圏諸国の中で、投資額が最も多かったのは中国でした。

参考:Bitget Study Uncovers Financial Goals and Investment Trends of Cryptocurrency Users

この調査結果からも、中国の投資家が政府の規制を回避しながら仮想通貨取引を続けていることが明らかです。

2024年の仮想通貨市場は、ビットコインを筆頭に盛り上がりを見せており、今後1000倍の爆上がりが予想される銘柄も出てきています。政府による規制が厳しいとは言え、中国人投資家がこのようなチャンスを見逃すはずがありません。

中国の仮想通貨取引規制の流れ

中国の都市における仮想通貨のトレーダー

かつてビットコインのマイニング事業で世界の仮想通貨市場を牽引していた中国は、国内でのマイニング事業を禁止し、仮想通貨取引に厳しい規制を施しました。

これらの規制は一部緩和されたものの、中国政府による仮想通貨取引の取り締まりは現在も続いています。

これまでの中国国内での仮想通貨取引の規制の流れをまとめてみます。

2013年12月:政府機関がビットコインに警告

中国人民銀行や中国証券監査委員会などの政府機関が「ビットコインのリスク防止に関する通知」を発表しました。

これは、中国国内での仮想通貨決済を事実上封じ込める狙いがあり、ビットコインをはじめとする国外の仮想通貨銘柄による決済を禁止する流れとなりました。

2017年9月:ICO取引を禁止

ICO(Initial Coin Offering)とは、スタートアップ企業が、企業やユーザーからの資金調達を目的として独自に発行した仮想通貨のことです。

ICOはスタートアップ企業にとって、資金調達の有力な手段となるアイディアではあるものの、その多くが実態を伴わないプロジェクトによる投資詐欺に悪用されたことで、仮想通貨市場に大きな混乱をもたらしました。

中国はICO取引のリスクを早くから認識しており、2017年9月に「トークン発行の資金調達リスクの防止に関する発表」を通知、これにより中国国内でのトークン発行およびトークンによる資金調達、取引業務を禁止しました。

これにより、中国の仮想通貨取引所は閉鎖に追い込まれ、中国国内で仮想通貨の取引ができない状況になりました。

2020年1月1日:暗号法が施行

暗号法とは、暗号化された情報や暗号資産、インターネットセキュリティを中国政府が保護することです。不正取引を防止する役割があります。

その一方で、仮想通貨取引の監視がより一層強化される結果となりました。

2021年9月24日:仮想通貨取引の全面禁止

中国人民銀行は、仮想通貨決済や取引情報の提供などの関連サービスを全面的に禁止すると発表しました。

これまでの規制と大きく異なる点は、仮想通貨取引を違法な金融取引と位置付け、刑事責任を追求する方針が決定したことです。

これにより、海外の取引所がインターネット経由で中国国内で仮想通貨サービスを提供することも違法に問われるようになり、事実上、中国国内での仮想通貨取引はできない状況となりました。

上記のとおり、中国国内で仮想通貨取引に対する規制が厳格化される一方、世界ではメタバース関連の仮想通貨が注目を集めています。さらに、将来有望なアルトコインも続々と登場しています。

仮想通貨市場が過熱し続ける中、なぜ中国政府は仮想通貨に警戒を強めているのでしょうか。

中国政府が仮想通貨取引を規制する理由とは?

都市の夜景にあるビットコイン

中国政府は、仮想通貨取引によって国外への資金流出が起こる可能性に警戒しており、金融リスクを管理するために仮想通貨取引に対して厳しい監視を続けています。

その一方で、中国は世界初となる国家主導のデジタル通貨「デジタル人民元」を普及させたい狙いがあります。

  1. 国外への資金流出を防止
  2. 金融リスクの管理
  3. デジタル人民元の普及

これらを実現するために、中国政府は仮想通貨取引を厳しく規制すると同時に、デジタル人民元を普及させるという、ダブルスタンダードな姿勢を見せています。

国外への資金流出を防止

中国は厳格な資本規制を持っており、仮想通貨取引に関わらず、国外への資金流出を厳しく監視しています。

仮想通貨はその性質上、国際送金や取引が容易に行えるため、資金の国外流出が懸念されていました。

特にビットコインは、政府の通貨管理を回避する手段として使用されることがあり、ビットコインの取引が活発化するに従って、国内経済や基軸通貨の安定に影響を与える可能性があります。

そのため、中国政府は国内の仮想通貨市場に対して厳しい規制を敷く必要があったのです。

金融リスクの管理

仮想通貨は非常にボラティリティが激しく、投機的な動きをする特徴があります。

大量の資金が仮想通貨市場に流れ込んだ場合、急激な価格高騰に伴いバブルが発生、その後の暴落によって金融リスクを招く恐れがあります。

中国政府はこの金融リスクを防ぐため、仮想通貨取引に厳しい制限を設けました。

仮想通貨取引を厳しく規制することで、中国国内の経済の安定化を図り、国内投資家の資産を守る狙いがあります。

デジタル人民元の普及

中国政府は、政府発行のデジタル通貨「デジタル人民元」を開発し、国内の主要な決済手段として普及させることを目指しています。

この取り組みの一環として、ビットコインを含む他の仮想通貨が中国国内で広く使われることを防ぐために、仮想通貨取引に関する規制を強化した背景があります。

デジタル人民元を普及させることにより、資金の流れを政府が一元管理でき、金融政策の実施がより効率的になります。また、国家主導の世界初のデジタル通貨を推進することにより、ブロックチェーン技術の分野で世界をリードする狙いもあるでしょう。

中国政府が発行する仮想通貨「デジタル人民元」とは?

中国紙幣と仮想通貨

デジタル人民元は、中国政府が国内での決済手段として普及を促進しているデジタル通貨です。つまり、中国政府により発行・管理される仮想通貨になります。

もしデジタル人民元が中国市場で普及した場合、中国とビジネス関係の強い国々(特に発展途上国)でも普及する可能性があり、米ドルを中心とする世界経済へ大きなインパクトを与えることになるでしょう。

デジタル人民元の特徴

ビットコインなどの非中央集権的な仮想通貨と異なり、デジタル人民元は中国政府によって発行・管理されているデジタル通貨です。これは、従来の法定通貨である人民元をデジタル化したもので、その価値は現物の人民元と同等であり交換可能です。

デジタル人民元はブロックチェーン技術を使用しており、仮想通貨の特徴でもある取引の匿名性を保ちながらも、政府が犯罪防止、税金の徴収、金融規制を行えるように設計されています。デジタル人民元は中国政府の監視下で安全かつ透明性の高い取引が保証され、マネーロンダリングなどの不正取引を防ぐ役割を果たしています。

デジタル人民元の現状

中国政府は2020年以降、国内の主要都市においてデジタル人民元の実証実験を実施しており、実店舗やオンラインストアでの決済、さらに医療や公共サービス、行政サービスなど幅広い分野においてデジタル人民元の実用性が実証されています。

しかし、2022年までのデジタル人民元の普及率は、既存の人民元通貨のわずか0.1%に留まっています。背景には、中国国内ではすでにWeChatPay(ウィーチャットペイ)とAlipay(アリペイ)というQRコード決済がすでに主要な決済手段として広く普及していることが関係しているでしょう。

ただし、これらのQRコード決済では、消費者と事業者がそれぞれの決済会社に個別に登録する必要があり、さらにWeChatPayとAlipay間での互換性のないという問題があります。

デジタル人民元はこれらの問題を解決する可能性があり、中国国内での決済手段としての普及に向けた鍵となりえます。

デジタル人民元の今後

中国政府は、デジタル人民元普及に向けて、消費者と事業者にさまざまなインセンティブを提供することでデジタル人民元の利用を促しています。

また、デジタル人民元を利用した政府補助金、社会保障、納税といった公共サービスへの利用拡大を図ることで、公的決済インフラとしての普及を目指しています。

この他にも、オフラインでの決済取引やより高度なセキュリティ機能の追加など、利用者にとっての利便性を高める施策が進められている状況です。

今後、デジタル人民元の普及が進むに従い、中国国内での金融取引の透明性と効率性が向上し、デジタル人民元を中心とする世界に先駆けた新しいデジタル経済の構築を実現することが期待されます。

中国発のおすすめ仮想通貨プロジェクト

中国ではデジタル人民元の普及を促進するために、仮想通貨取引を厳しく監視する一方で、中国発の仮想通貨プロジェクトが多数存在しています。

2024年現在、中国発の仮想通貨プロジェクトとして以下が特に注目されています。

  1. Conflux(CFX)
  2. NEO(NEO)
  3. Vechain(VET)
  4. Huobi (HTX)

これらのプロジェクトは、中国国内の法規制を厳守しつつ、国外での活動にシフトしたことで成長を遂げてきた結果であり、中国政府もブロックチェーン技術の研究と開発を積極的に支援してきた背景があります。

中国発の仮想通貨1:Conflux(CFX)

Confluxは、中国発のブロックチェーン技術を基にした仮想通貨で、高い処理能力とセキュリティを備えています。

Confluxの最大の特徴は、「Tree-Graph consensus algorithm」という技術です。この技術は、安全性を保ちながら個々の取引を高速処理することを可能にしました。利用者はストレスなくスムーズに取引を行うことができるようになります。

また、分散型アプリケーション(DApp)により、他のアプリへの拡張(スケーラビリティ)が容易になり、様々な分野での応用が期待されています。

中国発の仮想通貨2:NEO(NEO)

NEOは、ブロックチェーン技術を利用して、経済活動をより効率的かつ信頼性のあるものに変革する「スマートエコノミー」の構築を目指すプロジェクトです。

NEOの最大の特長は、中国の厳しい法規制に適応するブロックチェーンを開発している点です。これにより、中国国内でのブロックチェーン技術の普及と進化に貢献し、同時に投資家が法的に保護されたデジタル資産を持つことができるように設計されています。

また、ブロックチェーンを活用したスマートコントラクト(契約を自動実行することで取引の透明性と効率化を向上させる技術)により、デジタル資産の管理を強化することで、NEOは「中国のイーサリアム」と呼ばれることもあり、中国国内での注目を集めています。

中国発の仮想通貨3:VeChain(VET)

VeChainは、ルイ・ヴィトン中国の元CIOが設立したプロジェクトで、サプライチェーン管理の効率化とビジネスプロセスの透明性向上を目指しています。

Vechainの主な特徴は、ブロックチェーン技術を活用して配送プロセスの透明化を図り、偽造を防ぐソリューションを提供することで、輸送および製造プロセスにおける信頼性を保証している点です。

これにより、特に物流業や製造業のサプライチェーン管理の機能性向上が期待されています。

中国発の仮想通貨4:Huobi(HTX)

Huobiは、中国発の仮想通貨として世界各国に進出し、信用取引の先駆けとなったプロジェクトの1つです。

ユーザーはHuobi Tokenを利用することで、Huobiプラットフォーム上での取引手数料が割引されるメリットを受けるなど、ユーザーの利便性を向上させる仕組みを提供しています。

HuobiはJD.comやCITIC Groupといった中国の大手企業と業務提携を結んでおり、今後グローバルな仮想通貨市場において重要な役割を果たすことが期待されています。

まとめ:中国の仮想通貨市場はグローバル市場への拡大が期待される

中国風の建物の前でラップトップで仮想通貨を取引する人々

中国政府は、デジタル人民元の導入と普及を積極的に促進しています。

デジタル人民元は、通常の仮想通貨と同じように取引の匿名性を保ちつつ、政府による犯罪防止、税金の徴収、金融規制が実行可能な構造に設計されています。これにより、中国政府の監視下で安全かつ透明性の高い取引が保証されます。

しかし、2022年までのデジタル人民元の普及率は、わずか0.1%に留まっています。デジタル人民元の普及を促進するためにも、中国国内でのビットコインなどの国外発祥となる仮想通貨取引を厳しく制限・監視しているのが現状です。

その一方で、中国発となる仮想通貨プロジェクトが注目を集めている現状が存在します。

このような矛盾が生じている背景には、中国政府がブロックチェーン技術において世界をリードすべく、中国の法規制を遵守する中国発の仮想通貨プロジェクトをサポートしてきた事実があります。

本記事では、以下の5つの中国発となる仮想通貨プロジェクトを紹介しました。

  1. Conflux (CFX)
  2. NEO(NEO)
  3. Vechain (VET)
  4. Huobi (HTX)

これらのプロジェクトは、中国国内の法規制に適応しつつ、グローバル市場への拡大を図ることで成長を果たし、さらに中国のブロックチェーン技術の発展と普及に貢献してきました。

また、中国発となる仮想通貨には、SMOGなどのような投機対象として今からでも大きく儲けられる可能性がある仮想通貨銘柄もあります。

引き続き、中国の仮想通貨市場の動向に注目しておきましょう。